こんにちは、齋藤です。

「ある行動を習慣化したい時、何が一番大事か」

私がこういう質問をされたなら、とりあえずは小さな目標を設定することが大切だと答えるでしょう。

日常の生活の中で無理なく取り込めるような、些細な目標から始めることが継続の第一歩です。私はこの小さな目標を「スモールステップ」と呼んでいます。

スモールステップから始めることの重要性は、習慣化に関する様々な本で言及されているため、ご存じの方も多いかもしれません。

しかしその一方で、

「小さなことを目標にしたが、なかなか続けることができない」

という人もチラホラ見受けられます。

私としては、スモールステップは習慣化におけるテッパンの方法だと思います。では、なぜ続けられない人がいるのでしょうか。

そこには「小さなこと」に対する勘違いがあるのです。

「小さな目標」に対する勘違い

小さな目標でも続けられない人の大きな原因として

設定した目標が実は小さくなかった

ということが考えられます。

架空の人物を設定してご説明しましょう。

「毎日30分ランニングする」という目標を習慣化しようとして、結局挫折してしまった人がいるとします。

この人を仮にAさんとしましょう。

Aさんは、この目標は少しハードルが高かったと反省し、目標を小さくすることにしました。

「走るのはしんどいからウォーキングにしよう。思い切って時間も短くしてみよう」

こう考えたAさんは、少し屈辱的でしたが「10分だけウォーキングをする」という目標に変えてみました。

しかし1日2日くらいは続いたものの、結局、途中で挫折してしまいました。

「なぜ、こんな小さな目標さえ続けられないのか。やっぱり自分は続かない人間なのか。」

Aさんはさらに自身を失ってしまいました。

それは本当に「小さな目標なのか」

さて、なぜAさんは小さい目標を設定したにもかかわらず習慣化できなかったのでしょうか。

小さな目標でさえ続けられない人間だからでしょうか。

まず抑えておきたいのは、続かない、習慣化できない人間などいないということです。

習慣化は脳の機能であり、何一つ習慣化していない人間など存在しないからです。

Aさんが続けられないのは、習慣化できない性格だからではありません。目標設定が間違っていたからです。

つまり「10分のウォーキング」は小さな目標ではなかったのです。

目標を具体化すると潜在的な労力が見えてくる

確かに「10分だけウォーキングする」と思うと簡単と思うかもしれません。

「30分のランニング」から変えたとすればより一層小さく感じられるでしょう。

しかし、一口に10分のウォーキングといってもその実行には様々な労力が伴うのです。

始めるところから終わるところまで順を追って考えてみましょう。スタートを茶の間で座っている状態だと仮定します。

  1. 座っている状態から立ち上がる
  2. 運動着に着替える
  3. 飲み物を用意する
  4. 玄関まで行く
  5. 靴を履く
  6. 外に出る
  7. 鍵をかける
  8. 道路に出る
  9. 計測機器(スマホ、万歩計)をセットする
  10. ウォーキングを開始する

人によっては省く工程もあるでしょうが、ウォーキングを始める前だけでこれだけのプロセスをこなす必要があるのです。

当然ですが、帰ってきた後は、また着替えたり、汗を拭いたりする手間も時間もかかります。

これらの行動に伴うエネルギーと時間の消費は、ウォーキングをしようと思わなければ必要のなかったものです。

その時間で日頃の疲れを癒やしたり、趣味にエネルギーを費やすこともできたわけです。

さらに言えば、人によってはウォーキング中にも不安要素をはらむ可能性があります。

「ウォーキングするのを人に見られるのが何となく恥ずかしい」

とか

「途中でお腹が痛くなったらどうしよう」

などの懸念ですね。はい、私のことです。

以上のように、「ウォーキング10分」という一見小さな目標でもこれだけのコストがかかるのです。

これでもまだ小さな目標と言えるでしょうか。

相当の労力をかけるシロモノと考えられられないでしょうか。

たとえそう思えなくても、実際に継続できていないという結果がその事実を証明していると言えます。

私たちの体は潜在的な労力を学習している

ただ、これらの行動は1回腰を上げてしまえば案外苦もなく達成できてしまいます。

「やる前は面倒くさかったのに、始めたらどってことは無かった。むしろ楽しかった」

という経験がある人も多いのではないでしょうか。

そうなんです。人は一度やり始めると案外できてしまうものなんです。

この現象は、心理学的(脳科学的?)には作業興奮と呼ばれるそうです。

しかし実際に行動に移せないのは、始める前にこれらの手間を頭の中で想定してしまうからなのです。

私たちは過去の経験から行動に伴う労力を瞬時に予測します。結果、その腰はどんどん重くなっていきます。

大きな目標でも最初は達成できるかもしれません。しかし行動を続けるほど、その労力は体に刻み込まれていくことになります。ですから日にちが経つほど、行動を実行に移すことに抵抗が生まれていくのです。

つまり、三日坊主になる人は、3日間かけてその行動がしんどいことだと自分に学習させているだけなのです。

そう考えれば、むしろ続けられる方が不自然だとさえ思えます。

小さな目標より労力を伴う行動を実行できる理由

少し話がそれるかもしれませんが、ここで1つ疑問が生まれます。

私たちは10分のウォーキング以上に労力のかかることを続けることができています。

1日何時間も仕事したり、掃除をしたり、料理をしたりしますよね。

それらに比べれば10分のウォーキングなど取るに足らないように感じます。だからこそ小さな目標だと勘違いしてしまうのかもしれません。

なぜ10分のウォーキングが続けられず、それよりも労力のかかる行動は続けられるのでしょうか。

習慣化しているから、と言ってしまえば簡単ですが、そもそもなぜ習慣化に至ったかということですね。

これらの行動とウォーキングの違いは、労力に伴うメリットがあるかどうかです。

仕事をしっかりとこなさなれけばお金を得ることはできませんし、周囲との関係も悪化しかねません。

掃除しなければ埃まみれの部屋に住むことになりますし、料理をしなければご飯を食べることはできません(外食で済ませることもできますが毎日というわけにはいかないでしょう)。

つまり行動に労力は伴いますが、それに見合うメリットもあるからこそ、これらの行動は継続できているのです。

もちろん、仕事が好き、掃除が好き、料理が好きと、それらの行動に単純に喜びを感じる人であれば続けるのは苦もないことです。行動そのものにメリットが伴っているからです。

スポーツや芸術、ゲームなどに長時間没頭できるのも同じ理屈ですね。

一方で、ウォーキングに関してはどうでしょうか。

手間はかかりますが、それほど明確な報酬は得られないのではないでしょうか。

ゆくゆくは健康になるかもしれませんが、少なくともそれは今すぐではありませんし、どれだけこなしたら結果が出るのか確実性もありません。

行動に対して信頼性のあるメリットがないのです。

だから、たった10分でもウォーキングは続けることが難しいのです。

正しい「小さな目標」の設定方法

Aさんは小さな目標を正しく設定する事ができず、結果、習慣化に失敗しました。

では私たちは、どうしたら小さな目標を設定できるのでしょうか。

「本当の小さな目標」はあなた自身が教えてくれる

小さな目標を正しく設定する方法は実は難しくありません。

たとえば私がAさんに運動の習慣化をアドバイスするなら、まずは室内での10分間の有酸素運動をオススメします。

足踏み運動でも昇降運動でも良いです。マンションやアパートに住んでいて足音が階下に響くのが気になるなら、軽いスクワット運動でも良いでしょう。

これなら着替える必要も外出する必要もありません。テレビを観ながらだってできてしまいます。

誰かに見られる心配もありませんし、お腹が痛くなったらトイレにすぐ駆け込むこともできます。

要するに、ウォーキングよりよっぽど手間のかからない目標なのです。

もしこれでも継続できなければさらに労力を減らします。

シンプルな方法としては、時間を5分、3分と減らしていくことです。それでも継続できないなら「1日1回足を上げ下げする」でも構いません。

実際に行ってみて、あなたが継続できるレベルの行動が適切な小さな目標となります。

もちろん、どの程度の目標が小さな目標といえるかは人によって異なります。

あなたにとっての本当の小さな目標は、あなたにしか見つけることができないのです。

継続の目安は1週間程度。1週間続けられれば、それがあなたにとっての本当の小さな目標だと言えるでしょう。

継続すれば目標は段々大きくなっていく

「そんなにレベルを落としたら目的が達成できない」

と考える方もいるかもしれません。

安心してください。継続さえしていけば自然と目標は大きくなっていきます。

私が筋トレを習慣化しようと思って最初に設定した目標は「スクワット1回」でした。

たった1回です。続けられない方が難しい気もします。

しかしそれでも忘れそうになったり、おっくうに感じたことは何度もあります。

ただ、たとえ寝る前に思い出しても十分実行できるので、続けること自体は難しくありません。むしろこれだけ目標を小さくして挫折したくないという気持ちが上回ります。

そんなバカバカしいほど小さい目標で始めた筋トレですが、今ではスクワット30回、けんすい10回強、ディップス(腕立て伏せの一種)10回弱を毎日行うまでになっています。これからも続けていけば、さらにメニューは強化されていくでしょう。

これは毎日継続することで、筋力がついたり、継続したことで筋トレを行うことの抵抗が少なくなっていったからです。

行動に伴う労力が低下した分、小さな目標のレベルが上がったわけです。

だからたとえ小さな目標から始めたとしても、継続さえすれば自然とその目標は上がっていきます。

ひいては、当初の目的達成にも近づくことになります。

10を設定して結局0になるよりも、1を設定して毎日継続する方がはるかに有意義。

習慣化における目標設定にはこのような考え方が大切なのです。

たった1回の筋トレがジム通いに発展する

バカバカしいほど小さい目標でスタートすることの大切さをまとめた本もあります。この著者も最初は腕立て伏せ1回から始めて、それが30分の筋トレへと発展し、最終的にはジムに通うまでになりました。

最初は本当に小さな一歩でも最終的には立派な習慣へとレベルアップするポテンシャルを秘めているのです。

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全ての習慣化でスモールステップの工夫は重要

もちろん、これは運動だけの話ではありません。

  • 英単語を1日1つ覚える
  • 手をつけられていない仕事は書類に目を通すだけでも行う
  • 床に落ちている本を一冊だけ棚に戻す

などなど、勉強、仕事、家事といったあらゆる習慣づくりに適用可能です。

人はメリットに見合わない労力は使いません。

行動を継続させたいなら、自分のレベルに合わせて徹底的に小さな目標にすることが大切なのです。


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習慣マネジメンター。「習慣は最も無理なく行動をコントロールして成果をもたらすアプローチである」を信条に活動。日本行動分析学会会員。
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