※この記事は、「シンプルに学ぶ行動分析学」の第6回です。

興味が湧きましたら第1回からどうぞ!

 

こんにちは、3110です。

 

前々回は行動を習慣化させる強化の原理、前回は習慣化した行動を減少させる消去の原理をご説明しました。

今回は弱化の原理についてご説明します。

弱化の原理が働く行動はなかなか習慣化できません。

なので習慣化させたい行動にとっては憎いあんちくしょうとなり、やめたい行動にある場合は弱化をいかに働かせるかが鍵となります。

さっそく、説明していきましょう。

 

弱化の原理

弱化の原理を一言で表すと、こうなります。

 

行動の後に嫌な結果が伴うとその行動は将来起きにくくなる。

 

「会議中に反論したら白い目で見られたので、発言を控えるようになった」

「授業中スマホをいじってたら没収されたので、授業中にスマホは出さないようにした」

 

このような状況は弱化の典型例といえるでしょう。

白い目で見られるだとか、スマホを没収されるなどのデメリットが原因で行動が抑制されているのです。

 

強化の原理と同じように、弱化の原理にもデメリットの種類によって2つの種類に分かれます。

「嫌子出現の弱化」と「好子消失の弱化」です。

順にご説明していきましょう。

 

嫌子出現の弱化

 

嫌子(嫌なもの)が行動の後に出現すると、その行動は将来起きにくくなる。

この現象を嫌子出現の弱化と呼びます。

嫌子が出現して行動が弱化されるわけですね。

 

上で挙げた「会議中に反論したら白い目で見られた」という状況は、まさに嫌子出現の弱化が起きやすいシチュエーションです。

白い目という嫌子の出現によって、反論するという行動が弱化されています。

 

 

誰もが経験するであろう、嫌子出現の弱化としては

「親から叱られる」

という経験でしょうか。先生でも親戚でも近所のおじちゃんでも良いのですが。

多くの子どもにとって、叱られることは大きな嫌子です。大人でもそうかもしれません。

だから何か行動を起こした後に叱られると、その行動をしなくなることが多いのです。

叱ることは大きな嫌子なので行動を抑制する力が強い傾向にあります。

ですから、叱る方は何がいけないのかしっかり理解させて適切な弱化を導くことが大切ですね。

 

好子消失の弱化

 

さて、2つ目は好子消失の弱化です。

今までの流れからお分かりになる方も多いかもしれませんが、

好子(好ましいもの)が行動の後に消失すると、その行動は将来起きにくくなる。

これが嫌子消失の強化です。

好子が消失することで行動が弱化されるわけですね。

 

最初の例で挙げた「授業中スマホをいじってたら没収された」という状況は、この好子消失の弱化になります。

スマホという好子が没収される、つまり消失することによって、授業中スマホをいじるという行動が弱化されているのです。

 

 

ちなみに、没収される時に同時に叱られたという場合は、同時に嫌子出現の弱化も起きている可能性があります。ダブルパンチってやつですね。

 

日常的な例を他にも挙げてみると、

「コンビ二の傘立てに傘を差していたら、傘がなくなっていた。」

なんていうのは好子消失の弱化になり得るでしょう。

という好子が消失することで、傘立てに傘を差す行動が弱化されるからです。

このような経験をした後は、傘を店内に持ち込むようになるかもしれませんね。

 

弱化された行動は、強化された行動とは異なり現在は習慣となっていないわけですから、普段の行動を観察しても見つかりにくいかもしれません。

ただ、過去の経験を思い出して「なぜあの行動はしなくなったのだろう」と考えてみることは大事だと思います。

そこには、あなたがこれから行動をコントロールしていくためのヒントが隠されているのかもしれないからです。

 

まとめ

・行動の後にデメリットがあるとその行動は将来起きにくくなる。(弱化の原理)

・行動の後に嫌子(嫌なもの)が出現すると、行動は弱化される。(嫌子出現の弱化)

・行動の後に好子(好ましいもの)が消失すると、行動は弱化される。(好子消失の弱化)

 

「シンプルに学ぶ行動分析学」では、この回で行動分析学の基本的な3つの行動原理「強化の原理」「消去の原理」「弱化の原理」を網羅したことになります。

 

ここで一度確認しておきたいことは、たとえ同じ行動で同じ結果が起きたとしても、全ての人が同じように行動が強化されたり、弱化されたりするわけではないということです。

例えば、ビールが好きな人でも嫌いな人でも、飲めば苦みという刺激が提示されます。

しかし、この苦みが好子なのか嫌子なのかは人によって異なるため、ビールを飲む行動が強化される人もいれば弱化される人もいるのです。

ビールの苦みが嫌子となっている人は「あんなモノが飲めるなんて理解できない」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、行動分析学を効果的に活用するには、客観的に行動を分析することが大切です。

そのためには、その人の(あるいは自分自身の)行動を、思い込みや主観的なフィルターを通さずに観察することが大事なのです。