こんにちは、3110です。
今回は、こんな相談に応えてみたいと思います。
私は音楽が大好きで、しょっちゅうライブやコンサートにも行っています。
自分でも楽器を演奏できるようになりたいと思って、先日ギターを購入しました。
でも最近では全然練習できていません。なんだか弾くのががおっくうに感じてしまって手をつけられていないのです。
たまに練習しようと思うのですが、結局、続けることができません。
いわゆる三日坊主です。
今ではほとんど部屋のオブジェと化してしまっています。
私の飽きっぽい性格がいけないんでしょうか?意思が弱いから?
それともギターは私には合ってないんでしょうか。
性格や意思の力は、できない原因ではない
やってみたいことがあって、実際に始めてみるのだけど、長続きしない。
本当にやりたいことではなかったのか、飽き性の自分が悪いのか。
悩んでしまう気持ち、よく分かります。
ですが、まず断っておきたいことが1つあります。
ギターの練習が続かないのはあなたが飽きっぽいからでも、意思が弱いからでも、ギターが合っていないからでもありません。
なぜなら、「飽きっぽい」「意思が弱い」「ギターが合っていない」、これらの自己分析は、あなたがギターの練習が続けられていないという現状から判断したものだからです。
現状の行動を性格という表現で言い換えたものに過ぎません。
仮にどうして飽きっぽいかを訊かれたら、その根拠を何に求めますか?
おそらく、行動が長続きしないからと答えざるを得ないでしょう。
つまり質問と答えが堂々巡り、循環論になってるのです。
これでは長続きできない本当の理由とは言えません。
だから性格などは行動の原因にはならないのです。
では、なぜギターの練習が続かないのでしょうか。
その理由は、行動の結果に着目するとわかります。
初心者には長続きしない行動原理が生じやすい
初心者の練習が続かない理由は極めてシンプルです。
その理由は、行動に好ましくない結果が伴っているからです。
詳しく説明していきましょう。
強化の原理
ギターを買った時にあなたが期待していた結果はこのようなものでしょう。
仮にこのような結果がすぐ得られるのであれば、あなたはギターを練習するようになるでしょう。
行動の後に好ましい結果が伴うと、その行動は習慣化しやすくなるからです。
この行動原理を強化の原理と言います。
ちなみに好ましい結果のことを行動分析学では好子と呼びます。
弱化の原理
一方、ギターを始めた時に実際に直面している現実はこうです。
結果の違いは一目瞭然です。練習する行動にはネガティブな結果が数多く伴っています。
付け加えるならば、練習にはある程度の時間を確保しなくてはなりませんし、環境によっては家族にうるさいと言われたり、隣人の迷惑になっていないか不安を感じてしまうかもしれません。
行動の後に、このような好ましくない結果が伴うと、その行動は習慣化しません。
この行動原理を弱化の原理と言います。
ちなみに、好ましくない結果のことを行動分析学では嫌子と呼びます。
好子が伴う行動は強化され、嫌子が伴う行動は弱化する。
これは古来からの生存本能という面から見れば合理的かつ当然の行動原理です。
そして、大抵の初心者はこの弱化の壁にぶち当たることになります。
だから、何か新しいことを初めても続けることは難しいのです。
理想を叶えるには塵を積まなければならない
では実際に期待していた結果、つまりきれいな音色を奏でるだとか好きな曲が弾けるなどの好子を得られるにはどのようなプロセスを経る必要があるのでしょうか。
イメージにしてみるとこんな感じです。
つまり練習するという行動を何度も何度も反復することで、初めて当初に期待していた結果を得られるかもしれないのです。
かもしれないというのは、未だ経験したことのない未来の話だからです。保証はありません。
一方、練習する度に避けるべき好ましくない結果、つまりデメリットが必ず伴います。
もちろん、同時に少しずつ上達しているはずなのですがあまりに小さな一歩なので、デメリットに勝ちうる程の力を持っていないことが多いです。
その上初心者であればあるほどデメリットがメリットより大きい状況になります。
加えて、人の行動は遠い将来にある不確定な結果よりより行動に直近する確実な結果に強く影響されます。
練習を続ければ上手くなるかもしれないというメリットより、練習した直後に確実に生じている疲れる、指が痛い、音が上手くならないというデメリットに行動は強く影響されるのです。
つまり、強化の原理より弱化の原理の方が強く働くことになります。
ここまで考えれば、練習が続く方がむしろ不自然といえるのではないでしょうか。
こういった練習は「塵も積もれば山となる」型の行動と呼ばれます。
このタイプの行動は、1回の行動でははっきりとメリットと認識できる結果が生じないので行動が習慣化しにくいのです。
筋トレやダイエット、英語の勉強などもこの「塵も積もれば山となる」型の行動です。
行動を意図的に継続させる仕組みをつくる
しかし、なんだかんだできない理由を挙げてばかりいても仕方がありません。
練習を続けないことには、手に入るかもしれない栄光をつかむことはできないのですから。
では、実際に行動を継続するにはどのような対策が有効なのか。
その方法は、意図的に練習するような状況を作り出すことです。
これまで説明したように、自然のままに任せていては塵も積もれば山となる行動を継続することはできません。
行動が強化されるような環境に自身の身を置くか、自身でそのようなルールを作り上げる必要があるのです。
いわゆる長続きする人は、続けられる環境を作ることが上手いのだと考えられます。
行動できる環境づくりには大別して2つの種類があります。
やらなければデメリットが生じる環境
例えば、学生時代の部活動を思い浮かべてみてください。
ちょっと調子が悪いくらいでは休まなかったのではないでしょうか。
なぜなら、そこにはある種の強制力が生まれていたからです。
頻繁に休んでは、周りから置いて行かれる、先輩や先生に叱られる、同期から後ろ指さされるなどのデメリットが生じていたため、練習する行動が強化され、休む行動が弱化されていたのです。
このようなやらざるを得ない環境をつくれば、練習するデメリットに負けない行動力が生まれるでしょう。
やることでメリットが生じる環境
例えば、宿題をやったらおやつが貰える、ゲームができるなどのメリットが生じる場合は、宿題そのものは嫌悪的でも、宿題を早く済ませるようになるでしょう。
行動自体に自然に生じるメリットに頼るのではなく、意図的にメリットを設けてあげることで苦痛な行動でも継続できる可能性が高くなります。
簡単に言えば、自分にご褒美をあげる方法ということになります。
ただ、1つ注意すべき点があります。
いちいちその行動をしなくても、何のデメリットなくメリットが得られたりする環境だと効果が薄いということです。
例えば、そこにゲーム機があるなら宿題をしなくてもゲームをすることができますし、実際にやってしまう可能性があるでしょう。
同じ結果を得られるなら、よりコストのかからない行動を選ぶようにできているからです。
ですから、そうならないような個人個人のケースに合わせた環境をデザインする必要があるでしょう。
まとめ
- 長続きしないのは性格や気質が原因ではない。
- 初心者の練習にはデメリットが多く伴うため、続けることが難しくなる。
- 続けるには意図的に行動するような環境づくりが必要である。
好きだと思えるようなことに出会えるのはとても素晴らしいことです。
ただ、その素晴らしいことは時に目の前に立ちはだかる壁によって存亡の危機に立たされます。
場合によっては、せっかく好きだと思えたことが好きでなくなってしまうかもしれません。
それはとてももったいないことです。
だからこそ、その壁を打ち破る方法を学び実践・継続していくことは非常に大切なのです。